お彼岸を迎えて
お彼岸にはお墓参りをします。昔からの習慣ですが、案外その意味は知られておりませんね。簡単にご説明しましょう。
お彼岸の時期にご先祖の供養をするということは平安時代の日記などにも記載があることから大変古くから行われております。
お彼岸の中日は秋分の日ですから、真東から日が昇り真西に沈みます。真西には西方極楽浄土があります。極楽は十万億土という途方もなく遠い世界なのです。「土」とは一つの世界のことで、ヒマラヤを中心としたユーラシア大陸を指していました。西の方角に十万億もの大陸を超えた先に極楽という世界があり、太陽はまっすぐ真西に沈んで寸分たがわず極楽世界に到達すると考えられたのです。それでご先祖さまの供養をするようになりました。
「彼岸」という言葉は耳に慣れていますが、難しい言葉です。向こう岸という意味なのですが、簡単に言えばあの世の世界、悟りの世界のことを彼岸といいます。それに対して我々のいるこの世の世界を「此岸(しがん)」といいます。こちらの岸、ということです。その間には川が流れています。激流です。これを乗り越えないと悟りの世界に行かれないのです。厳しい修行を川の流れにたとえてこのように言うのです。
では私達が「彼岸」に到るにはどうしたら良いのでしょうか。お墓参りだけすれば良いのでしょうか。
お彼岸には仏壇にお団子をお供えしますね。「入り牡丹餅 開け団子 なかの中日小豆飯」という歌があります。
お彼岸の入りには牡丹餅を供えます。餅は私達の心の中にある白く汚れのない仏さまの心を意味しています。私達は本来仏さまと同じ悟りの心を持っているのですが、欲望や無知という闇で覆われています。その闇をアンコで表して、仏さまの心に自覚が無いことを意味しています。それを反省して中日、秋分の日を迎えます。
中日は小豆飯、つまり赤飯です。白いもち米と赤い小豆、私達が善と考えるものと悪と考えるものとは本来別のものでなく、表裏一体のことであると悟るのが中日です。私たちの中にある良い部分も、罪悪も、認めてしまいましょう、光を当てましょう、という意味があります。
開けには真っ白なお団子です。お団子は十個作ります。十は十善戒を意味します。①不殺生(生き物をみだりに殺さない)②不偸盗(ものを盗まない)③不邪淫(みだらな男女の関係をしない)④不妄語(うそいつわりを言わない)⑤不綺語(たわごとを言わない)⑥不悪口(人の悪口を言わない)⑦不両舌(二枚舌をつかわない)⑧不慳貪(ものを惜しんで貪らない)⑨不瞋恚(いかり憎むことをしない)⑩不邪見(まちがった間がえ方をしない)の十です。この戒(いまし)めを保って真っ白な悟りの境地に行きましょう、というのがお団子の意味です。
お彼岸の期間を心穏やかに過ごしたいものですね。
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